はじめに

本日は酷暑の中340名を超える方々にお集まりいただき有難うございます。

地域医療連携の推進を目指して始まった千葉県地域連携の会も5回目を迎えました。5回目の節目となる今回は新たな企画として行政と医療者の対話を設けました。高度成長期以来450万人もの人口増を見た千葉県はこれから未曾有の医療需要増加(医療危機)を迎えます。人類がかつて経験した事のないレベルの医療需要増加に対して解決策を持ち合わせた人は誰もいません。我々にわかっている事はこのような危機を乗り切るためには医療者だけの努力では不可能であり、行政・医療者・県民が一体となって健康を考える必要があることです。

千葉県共用地域医療連携パスは地域医療資源の効率的な活用と県民への平等で良質な医療の提供を目指したものですが、その普及のためには医療者の意識改革のみならず、県民の意識改革、行政の支援が必要です。救急医療においても医療機関単独による改善は限界に達しようとしており、医療者、行政、県民と一体になった改革が早急に必要です。しかし県民の皆さんに対しては時間をかけて説明していくことが大切でしょう。そこで、医療者と行政が問題意識を共有し、県民に対してどのように情報を提供するのか、どのように協力を要請するのかを考えねばなりません。

脳卒中を例に考えますと、急性期・回復期・維持期の連携が重要であり、全国の脳卒中パスがそのような作りとなっています。急性期病院を軸としたパスを乱立させるのではなく各診療段階において、どの医療機関を選択しても良好な医療環境が提供できることを目指して千葉県では共用パスを開発しました。さらに回復期も、維持期も足並みをそろえる横の連携を実現しようとしています。でも維持期(かかりつけ医)で脳卒中発作を起こさないように生活改善を指導していくことが最も重要です。県民の一人一人が最適な医療とは何かを考えていただけるように医療・健康について説明していくことが必要でしょう。私たちの目指す連携とは県下医療者が一体となった健康増進です。

しっかりした連携を作るためには、それぞれの医療機関が「常に高みを目指して」その長所を伸ばしていくことも重要です。私たち千葉大学は医療の最後の砦として高難度医療・先進医療を実践し生涯教育にもより一層力を入れていきたいと考えます。

平成23年8月3日

千葉大学医学部附属病院長

宮 崎   勝

 

第一部 行政と医療者の対話 Project Health 2020

【討論者】

1. 千葉県保健医療担当部長     井上肇 氏

2. 千葉県医師会副会長          田那村宏 氏

3. 千葉県看護協会長            松永敏子 氏

4. 千葉大学医学部附属病院長  宮崎勝


 今後予測される医療需要の急増に対応するための方策について討論します。千葉県は高度成長期以降に急激な人口流入がおこり発展してきました。400万人もの若い人口が流入したために人口当たりの医療需要は他府県に比べて少なく、医療機関・医療従事者とも我が国の中でも最も少ないグループに属しています。しかし近年急速に高齢化が進み、医療需要が急増しています。千葉県では平成204月の保健医療計画一部見直し以降、ブレーメン・プロジェクト、循環型地域医療連携を進めてきました。さらに平成21年度に政府が地域医療再生基金を提案した事を受けて様々なプロジェクトを立案実行してきました。これらのプロジェクトには県医師会は医療者としての立場から、県看護協会は看護の立場から、そして千葉大学は教育者および特定機能病院としての立場から関わってきました。それぞれの立場からの現状分析と対応策のポイントについてプレゼンテーションを行った後で討論を行います。

 全体会議ではiDeep社の御協力を得て電子会議システムを第一講堂と第二講堂で運用します。iPadまたはPCをお持ちの方はWIFIに接続し、お楽しみください。なお会議で使用した資料は後日http://renk-chibap.jimdo.com/にて公開する予定です。

 

第2部 がんパス

座長:乳腺甲状腺外科  長嶋 健

がん診療においては、医療の質を保証しつつ医療機関の機能分化および役割分担を進めることが求められています。このような中、標準化された診療体系に基づいて疾患管理の全体像を可視化し、医療機能に応じた役割分担をするために地域連携パスが提唱されました。がん対策基本計画、およびがん診療連携拠点病院の指定要件の見直しに伴って、拠点病院には5大がん(肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がん)の地域連携パスの整備が要求されています。千葉大学ではこれに婦人科がんを加えた合計6つのがん疾患を対象として、がん地域連携パスの策定を行って参りました。しかしながら、未だ地域医療連携体制自体の構築が必要な段階であり、地域連携パスが本格的に稼働するには克服すべき多くの問題があると考えています。本分科会では、がん地域連携パスの現状と効率の良い運用方法、今後取り組むべき課題等につき議論をしたいと考えています。

 

【発表者】

胃がん連携パス

食道胃腸外科 

松原久裕

大腸がん連携パス

食道胃腸外科

宮内英聡

肺がん連携パス(外科)

呼吸器外科

吉野一郎

肺がん連携パス(内科)

呼吸器内科

多田裕司

肝がん連携パス

肝胆膵外科

加藤厚

乳がん連携パス

乳腺甲状腺外科

長嶋健

 

第2部 病診連携グループワーク

Aチーム座長:地域医療連携部 日比野加奈子・河野由紀(第一会議室)

Bチーム座長:地域医療連携部 葛田衣重・津野祥子(第三講堂)

 

病診連携を如何に行うべきかを考えるための多職種グループワークを第3講堂と第一会議室に分かれて行います。ペーパー症例をもとに急性期病院の立場・維持期管理医療機関の立場を考え、これからの病診連携のあり方を考えます。多職種協働はProject Health 2020でも最も重要なことと考えています。職種によって所属する医療機関によって同じ「患者さんのために」がそれぞれ違う事を指します。違う立場の方の視点を理解する事はなかなか困難ですが、語り合おうとすれば出来るはずです。このグループワークでは語り合う事、お互いに相手の立場を理解する事を重視しています。短い時間ですが、連携を考えるきっかけを作りたいと思います。

今回は事前申し込みされた方で定員を超えましたので当日参加はできません。ご了承ください。

Aチーム:慢性疾患の症例です。

Bチーム:がんの症例です。

 

第3部 脳卒中・慢性疾患パス 1000

座長:救急医療センター神経系治療科部長 古口徳雄

地域医療連携部 藤田伸輔

脳卒中パスは千葉県共用地域医療連携パスの中でも最も多くの医療機関が採用し、適用されています。昨年末までに脳卒中パスを適用された患者数は1000名を超えたと推測されています。平成22年度には歯科のパスが追加され口腔内ケアや嚥下指導を行っていただける事になりました。かかりつけ医のところに患者さんが戻ってきて維持期のパスが使用されるのはこれからです。これまでパスの議論は急性期・回復期を中心に進めてきましたが、圧倒的にたくさんの患者さんをたくさんの時間管理する維持期での管理が最も重要です。今回はこの維持期を中心に議論を進めます。実際には糖尿病や高血圧、心疾患を合併された患者さんが多く、維持期のパスだけでは対応しきれない可能性も高いと思われます。そこで今年は糖尿病や心筋梗塞パスと合体させた慢性疾患パスを開発しています。

慢性疾患パスは糖尿病・高血圧・虚血性心疾患・不整脈・脳梗塞・脳内出血・クモ膜下出血・硬膜下血腫などに対応しています。これらの疾患のうち該当するものにチェックすると検査・診療計画が自動的に作成されます。この検査・診療計画は地区医師会単位で心電図を3か月ごと、あるいは6か月ごと等と標準を定めていただきたいと思います。

慢性疾患パスは急性期や回復期の病院から送られてきた患者さんばかりではなく、これまで診てこられた患者さんにも使用する事が出来ます。慢性疾患パスは今年度中に1000例以上の患者さんに使っていただきたいと思います。

なお脳卒中パスを使用された際に診療報酬を請求するためには年3回のパス会議に参加して急性期病院から厚生局へ参加者名簿を提出する必要があります。本連携の会でもパス参加証を発行しますのでご利用ください。

 

第3部 ITネット

座長:副病院長 高林克日己

千葉県では県内の医療再生のための情報バックボーンとしてITネットの構築を進めています。これは限られた医療機関を結ぶためのものではなく、千葉県下の全ての医療機関が相互に連絡することを可能にするシステムです。地域医療連携システムは各病院の電子カルテを連携するものとして、この10年全国各地で立ち上げが行われました。しかしその多くは成功例とはいえないし、接続には多額の費用が必要で、コストパフォーマンスにも問題がありました。今回のITネットの目的はこうした過去の失敗を考慮し、電子カルテの全ての相互運用性をはじめから図るものではなく、低コストを重視して継続性のある、かつ医療者にとって合目的で利用価値のある部分のみの情報共有化を目指すものです。

ITネットでは循環型医療を推進するための仕組みを持つ事が特徴です。具体的には医師が直接自院の電子カルテから直接アクセスすることで他院との連携ができることで、そのためのセキュリティを担保しています。ひどく大雑把にいえば、電子カルテを使用しながら他の医療機関にメールを送信したり、その患者の共有掲示板を見たり書きこんだりができるような仕組みと考えてください。また患者の登録のために忙しい外来医師に負担がかからないよう、登録は診療情報提供書作成時に自動的に行える仕組みをもっています。さらに千葉県共用地域医療連携パスをこの上で電子的に動かすことを可能にしています。平成23年度中に仮稼働が一部地域で始まり、参加希望者を募って拡大を図り、最終的にはこれを県の医療の連絡用のインフラとして整備します。さらに震災時や救急における情報システムなどのバックボーンとして発展することが期待されます。このセッションではITネットの内容と今後の計画について説明し、県内における診療情報共有について議論を深めたいと思います。

 

第3部 救急医療・震災支援

座長:救急部 貞広智仁

今年の救急医療分科会では震災支援を扱います。あまりにも大規模な災害に原発事故が重なる事によって未だ災害からの復興は道筋すら見つけることが困難な状況です。千葉県は津波被害、液状化被害、震災による直接被害、コンビナート火災による被害など多くの被害を受けた被災県ですが、震災当日から東北地方への災害支援も積極的に行ってまいりました。現地医療機関の立ち直りによって災害医療支援は一段落を認めましたが、その支援方法やタイミング、あるいは災害医療での重点の変化など反省すべき点も数多くあると考えます。分科会では千葉県全体の被災状況について県庁からご発表いただきます。また県下医療機関の被害状況のまとめと、浦安市での被害の状況などお話しいただきます。

被災地への医療支援には公立病院からの陸前高田への支援、JAMTの活動、習志野市医師会と習志野市の連携、亀田総合病院の取り組み、被災地からの患者受け入れ、千葉大学の活動(石巻・南三陸・気仙沼での医療支援、東松島での精神科医療支援、東北大への救援物資提供)などについての総括を行います。

 

発表者

千葉県保健医療担当部長          井上肇 氏

千葉県医師会救急災害医療担当理事  宍倉朋胤 氏

浦安市医師会                金子雅文 氏

習志野市医師会理事            梶本俊一 氏

亀田総合病院 在宅医療部部長     小野沢茂 氏

千葉大学救急部               貞広智仁

    精神科                新津富央

    地域医療連携部           井上崇